リンクバジェット

概要

リンクバジェット（Link budget）は通信システムの送信端から受信端の経路に存在するすべての利得と損失を計算する方法です。通信システムのすべての利得と損失を知ることにより、通信をどれだけ確実に受信できるかを予測することができます。たとえば衛星通信のリンクでは、発信者は受信機が適切なS/N比（信号とノイズの比）で信号を受信できるようにするために、衛星送信機の送信電力、アンテナゲイン、伝搬損失などを知る必要があります。リンクバジェットは指向性の高い送受信アンテナを使用してPoint to Point通信のような地点間のリンクを最適化できる通信を考える上で役に立ちます。

以下はリンクバジェットを示した図です。

各種パラメータ

受信電力の算出を可能にする基本リンクバジェットは以下のようなパラメータで構成されています。

PTx： 送信電力

LTx： 送信機、ケーブル、コネクタなどの損失

GTx： 送信アンテナのゲイン

LP： 伝搬損失

GRx： 受信アンテナのゲイン

LRx：受信機、ケーブル、コネクタなどの損失

PRx： 受信電力

これらのすべての値を組み合わせることにより受信電力を算出することができます。デシベルにすることにより加算・減算で求めることができます。

$$P_{Rx}  = P_{Tx}- L_{Tx}+G_{Tx}-L_{P}+G_{Rx}-L_{Rx}$$

注：上記式の最初の3項目（PTx、LTx、GTx）を計算した結果と送信機 E.I.R.Pは等しくなります

リンクマージン

通信状況は周辺環境により変動するため、受信レベルは受信可能な最低レベル（受信感度 ※1）に対してノイズやマルチパス、フェージング等の様々な通信現象を考慮してマージンを持たせることが必要になります。このマージンが大きいほど通信の信頼性が向上します。

※1：ここで述べている受信感度は、機器の性能と環境からの無線ノイズの影響を考慮した値です。リモコンのような接点情報を繰り返し送信するサイクリック送信に比べ、1回のみ送受信する通信の場合、さらに大きいマージンが必要になります。

※ この記事は当社英語サイトの記事を元に作成しています。オリジナルはこちらに掲載されています。