冬山での遭難に思う… 登山者バックカントリー向けビーコン発信器
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こんにちは、中の人(ちょう)です。
最近、朝の寒さが厳しくなってきました。布団から出るのがツラい時期ですね。
ご存じのとおり長野県は山岳が多く、冬になれば雪も降り、スキー場がにぎわいます。
安曇野から白馬方面をみると、どんどん山が白くなっていくのがとてもキレイです。
毎年起こるスキー場での遭難
残念なことに、毎年、スキー場で遭難したというニュースが入ってきます。
スキー場のエリアを超えて山岳エリアを滑降してからの事故のニュースです。地元だけでも1年間で数件は発生する状況が続いています。
最大40km届く登山者・バックカントリー向けビーコン発信器
そんなニュースを聞くと、2017年頃に北アルプスで実験したプロジェクトを思い出します。
以下のような端末をもって北アルプスで歩いている登山者の位置情報をリアルタイムで通知する仕組みになります。
大きさはアンテナを含む全長は30センチ、本体は95 x 33 x 22 mmほどで70gです。GPSを搭載し位置情報を150MHzのLoRa🄬通信方式で飛ばします。バッテリー駆動で1時間に1回送信ぐらいなら1週間ほど動作します。
TOZAN MAP – リアルタイムに登山者・バックカントリースキーヤー、スノーボーダーの現在位置を知ることができる
実験では、北アルプスの山小屋にもご協力いただいて、槍ヶ岳山荘と蝶が岳ヒュッテに中継局、西穂山荘とサーキットデザインに基地局を置き無線ネットワークを組み、インターネットを経由して位置情報をリアルタイムで確認できるようにしました。サーバー(tozanmap.jp)はまだ動いています。
北アルプスでの電波到達距離 – 実証実験結果
社員が実際に歩いたり遭対協の隊員や登山関係者に協力していただき、かなりのデータが集まりました。
北アルプスでの実験結果はこのような感じです。
青い丸が実際にリアルタイムで位置情報が届いた場所になります。思った以上に広範囲で届くことがわかりました。
もちろん届かないところもあるのですが、実験結果とシミュレーションを合わせると大体どこまで届くのかも予想できるようになりました。
ビジネス化への課題
しかしビジネス化にはなりませんでした。
カバーエリアを広げるのも課題ですし、あまりにも多くの人を見守ることは通信速度の問題で現実的ではなかったのが主な理由です。そもそも遭難する人は準備ができていない人が多く、そんな人が端末を持っていくわけがないのです。さらに言えば、結構なエリアで携帯電話が届いちゃうのですよ。遭難して警察や遭対協を動かすには、本人または家族からの通知が必要です。今どきは、携帯電話で連絡する人が多いようです。あと、保険に入っているか?尋ねられるので、山に行く前に保険に入っていた方が良いですよ。
携帯電話が使えないところをカバーできる利点
とはいえ、この位置情報をリアルタイムで通知する仕組みは強力です。山の奥に入れば携帯電話が届かないところは結構あります。限定されたエリアならばうまく基地局や中継局を設置することでカバーできます。
この仕組みをスキー場の外で滑降しようとする人に持ってもらえれば、バックカントリーの事故防止にも繋がり、助かる命もあるのではないのかと思うのです。
八方尾根スキー場でのシミュレーション結果
例えば、八方尾根スキー場でシステムを導入した場合、どこまで届くかシミュレーションしてみました。
↓こちらが八方尾根スキー場の全景(真ん中あたりです)。
ふもとの町に基地局を置いた場合にどこまで届くかというと、こんな感じになると予想されます。
八方池山荘に基地局を置いた場合に、どこまで届くかというと、こんな感じになると予想されます。
両方ともに設置したときのカバーエリアの予想はこんな感じになると思われます。
150MHz帯の電波は、こんなに届く
こんなに届くのだろうか?と思うでしょうが、北アルプスでの実験の結果から予想すると、これくらいは大丈夫と自信があります。
届かないところは、五竜のゴンドラ下り場のあたりや、岩岳のゴンドラ下り場あたりに中継局などを置くと更にカバーエリアが広がります。
特定小電力無線を使うので、運用費用はインターネットに上げる通信費ぐらいです。
もし運用されれば、遭難救助の際に役立つ位置情報となる
スキー場のエリア外は登山エリアです。冬山なので危険ですし、登山計画書が必要となります。これは遭難を救助する仕組みではありません。遭難したときに最後にどこら辺に居たかがわかる程度です。その情報だけでもどっちの斜面に行ったのか、どの沢を下りたのか、がわかるようになります。
登山計画書を出さないような人は端末を持つこともないので、以上のような仕組みがあっても効果がないと思います。事前にしっかり準備をして挑戦したけど自然に負けてしまった場合の一助になれば幸いです。
遭難ニュースを聞くたびに、こんな仕組みが提供できるのになぁ〜と思う今日この頃です。