技術情報

変調・復調

無線機器を使用する場合、無線機器の内部で変調・復調が行われます。ユーザーは無線機器や無線モジュールを使えば特に知識がなくても無線通信が可能です。しかしながら変調・復調は無線通信の基本となりますので概要だけでも知っておくと、どのように無線伝送しているのかを理解することができます。

このページでは変調・復調の基礎部分について記載します。

変調・復調の概要

有線の場合は送りたい信号(ベースバンド信号)、すなわち情報をそのまま信号線で送ることができますが、無線の場合、ベースバンド信号をそのまま送ることができません。無線では基本信号(搬送波・キャリア)に情報を載せて伝送します。この基本信号に情報を載せて送ることを変調といい、逆に受信した信号から情報を取り出すことを復調といいます。

ベースバンド信号

シリアルデータであればLogic 1(High)またはLogic 0(Low)のデジタル信号を指します。音声であれば音声のアナログ信号またはAD変換後の信号を指します。

搬送波

搬送波は信号を搬送する為の波を指します。英語ではcarrier waveですが、単にキャリア(carrier)と呼ばれる場合もあります。

変調 – Modulation

搬送波(キャリア)に情報(ベースバンド信号)をのせることをいいます。無線や1つの信号線に複数の信号を直接送ることができないため、搬送波にベースバンド信号をのせ、違う周波数に移して伝送します。一般的には搬送波には正弦波が用いられ、搬送波の振幅や周波数、位相のいずれかを情報信号に従い変化させて変調します。

復調 – Demodulation

受信した信号から情報(ベースバンド信号)を取り出すことをいいます。言い換えると受信した信号から搬送波を取り除き元の情報の状態に戻すことをいいます。

なぜ変調・復調が必要なのか

有線の場合

複数のベースバンド信号をそのまま伝送する場合、ベースバンド信号の数だけ信号線が必要になります。それぞれのベースバンド信号を異なる周波数の搬送波で変調・復調を行い、合成して伝送を行えば1つの信号線で伝送することができます。

無線の場合

電波法で使用できる周波数・帯域等が決められており、変調・復調が必要です。

変調方式

変調方式は搬送波に対し、どのような方式で信号を伝送するかの方式を指します。

変調する場合、ざっくりいってしまうと波の振幅の大きさ・数・位置のいずれかを変化させます。アナログ変調では振幅変調(AM)、周波数変調(FM)、位相変調(PM)、デジタル変調では周波数偏移変調(FSK)、振幅偏移変調(ASK/OOK)、位相偏移変調(PSK)が挙げられます。さらにこれらを多値化した4値、8値、16値・・・の方式もあります。

振幅の大きさを変える – 振幅変調

振幅変調は搬送波の振幅の強弱によってベースバンド信号を伝送する変調方式です。アナログの場合は振幅変調(AM – Amplitude Modulation)といいます。中心には搬送波、その両側には側帯波があります。側帯波の振幅を変化させて伝送します。アマチュア無線などでは搬送波がなく側帯波だけを使用するSSBも使われています。デジタルの場合は振幅偏移変調(ASK – Amplitude Shift Keying)といい、1,0の信号を振幅の強弱で伝送します。そのなかでも搬送波の有無で行うものはオンオフ変調(OOK – On Off Keying)といいます。無線では主に低速から数kbpsの中速通信で使われています。帯域が狭くても通信が可能なため、主に数十kHz~数十MHzの低い周波数帯で使われています。信号の変調・復調がし易いという長所がある一方、雑音を拾いやすい、混信に弱いという短所もあります。

振幅の数を変える – 周波数変調

周波数変調は搬送波の振幅は変えずに周波数を変化させることによってベースバンド信号を伝送する変調方式です。アナログの場合は周波数変調(FM – Frequency Modulation)といいます。身近なところではFM放送があります。デジタルの場合は周波数偏移変調(FSK – Frequency Shift Keying)といい、1,0の信号を決まった周波数より低いか高いかで伝送します。無線では主に数kbpsから数百kbpsの中速通信で使われています。雑音に強い、混信しにくいという長所がある一方、帯域が広くなってしまうため、VHF以上の高い周波数でしか使えない短所もあります。

振幅の位置を変える – 位相変調

偏移変調は搬送波の位相を変化させることによってベースバンド信号を伝送する変調方式です。アナログの場合は位相変調(Phase Modulation)といいます。デジタルの場合は位相偏移変調(Phase Shift Keying)といいます。位相変調は主にデジタル変調にて使用されています。例えば1,0の2値の場合、位相を0度と180度で伝送します。2値以外にも4値、8値・・・のように多値のものもある。1シンボルあたり複数ビット伝送できるため、主に中速通信で用いられています。C/Nに対する伝送誤り率が良いという長所がある一方、多値では変・復調回路が複雑であるという短所もあります。